声帯切除術とは
声帯切除術の主な目的は声を出さなくすることが多いと思います。実際は声帯除去後はほぼ声は出なくなりますが、声帯周りの組織に反響して多少声のような音は出ますが音として問題となることはほぼ無くなります。一般的で簡便な術式としては口腔内アプローチかと思います。簡単ですし手術時間も短いことがメリットです。しかし口腔アプローチは術野が狭く、かつ遠いので見えている声帯ヒダを確実に切除することが難しいのが難点となります。そのため上記の図説の様に声帯ヒダを完全に切除できずに術後の声が出てしまったり、一番のトラブルは右の図の様に声帯ヒダが再生する際炎症を伴うことで左右の声帯ヒダが癒着して呼吸困難になってしまうことさえあります。本院ではそれを避けるため、また術後の炎症や癒着をさせるために声帯切除の完全切除と切除縁の縫合や再び中央に再生することを避ける処置を施すため腹側喉頭アプローチを選択しています。縫合してあげることで術後の痛みや出血を予防でき咳予防にもなります。
本院での声帯除去は上記の声を出さないためで行うことはあまりなくほとんどが喉頭麻痺や喉頭虚脱における喉頭口の開口部を広げる目的で実施することが多いのが現状です(短頭種気道症候群のページ参照ください)。このアプローチはNew Tie Side のアプリでもあり喉頭室外反も完全に切除できるメリットもあります。命を守るために必要な処置として行っています。
腹側からみた声帯ヒダ
上の写真が喉頭アプローチの声帯ヒダです。Cynthia Zikes, Timothy McCarthy(2014)の文献では喉頭麻痺の88頭の犬で声帯除去したら成績良かったと報告されていましたが実際は声帯除去のみでは効果はいまいちでした。そのため喉頭麻痺のゴールデンスタンダードとされる術式であるTie Backや米澤先生考案のNew Tie Sideによって小角突起の側方化術が必須ですが同時に声帯を除去することで腹側の喉頭が開くことでより呼吸を楽に可能にすることを目的に場合によっては声帯除去を実施します。