プロテーゼについて
気管虚脱とは気管軟骨の脆弱化と気管膜性壁の下垂によって気管が扁平化する閉塞性呼吸器疾患である。その発生機序は未だに明らかにされていない。気管虚脱のグレードⅢ以上で頚部に限局する症例が特に手術対応となる。気管外プロテーゼ法は気管の外に上記の画像のようなループ状のプロテーゼを装着する。症例の体格によって適応サイズは様々であるので上記のように全てに対応できるようそろえている。またプロテーゼの素材は眼内レンズにも使用されている2重構造のアクリル材で3種類の太さがあり様々な症例に対応できるよう設定している。話は変わるがパグやイングリッシュブルドック、フレンチブルドッグに多い気管低形成は今まで治療法がなかったが、このPLLPを少し気管使用とは異なるが形状を工夫してたたまれる様に細くなった気管を広げることも可能である。
PLLPの設置、PLLP法のメリットとデメリット
気管の周りには上記の右画像の様に血管と反回神経が存在する。反回神経は触らないよう、傷つけないよう気管の周りの組織や血管を剥離してPLLPを装着してフィッティングします。想定していたものより大きいサイズが必要なら速やかに適切なサイズに変更します。縫合は左の画像のように行いだいたい75-100部位を縫合します。術前と術後は必ず気管支鏡検査を実施して手術が適切に行われたか判断します。本院では手術と内視鏡検査は手術用カメラ等ですべて録画しており飼い主様にお見せするようにしています。
PLLP 法は胸部気管や気管支虚脱がなければ根治を目指せるすばらしい術式ではあるが高齢であったり、気管虚脱の内科治療が長いために上記の部位の虚脱が併発していると術後どうしても咳の症状が残ってしまいます。術前のレントゲン検査では100%特に気管支虚脱は判別できないのが現実です。手術当日の気管支鏡検査で初めてその病気の存在が認めれれることも多々あります。そのため術後に咳が残る症例もいることは知っていなくてはいけません。また1000例以上執刀した米澤先生のデータによると約4%で気管壊死が起こる可能性があります(本院ではまだ経験はありません2022/09執筆現在)。それも対処法はわかってきており救命率は上がっています。またまれに反回神経由来と思われる喉頭麻痺も術後併発する(または最初から併発)可能性もありまた別な手術が必要になる場合があることも知っておかなければなりません。リスクと費用はかかりますがそれを乗り越えるとすばらしい効果をもたらす手術であると確信しています。発案したアトム動物病院、院長である米澤先生には感謝しかありません。